量子コンピューターで「神」を作ろう!という壮大な物語。
具体的には、神たる自律学習型AIを「箱庭」(解析世界)の中に置き、
その「箱庭」の中で、量子コンピューターの演算能力を活用して、
宇宙誕生から現在までのシミュレーションを行う。
「箱庭」から見たAIは、宇宙存在前に存在する、言わば“創造主”の位置づけ。
本プロジェクトは、リストラ寸前の量子コンピューター部門メンバーによる計画で、
この“創造主”に、現実世界の未来を占わせる事業を立ち上げるというもの。
この占い事業が当たれば部門を存続できるのでは!と一縷の望みを託すが、
AIが「箱庭」における自分自身の位置づけに疑問を覚えボイコットしたり、
別方式の量子コンピューターの実用化を目指す“同業者”からの妨害工作があったり。
果たして、部門存続は成功するのか?
そして、「箱庭」世界と、その世界の「創造主」の行く末は?
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シミュレーターにおける「神」と「箱庭」(解析世界)を設定することで、
「神」とは何ぞやを真面目に追求/論ずる内容。
遠藤周作の「沈黙」では、人間の叫びに対して神が応えない(応えられない)、
その沈黙(苦しみの共有)を以って、その存在を確認していたと思うのですが、
それに近いプロセスを本作でも踏襲しているのは、興味深い。
SFという仕掛けを使うことで、「神」(AI)と人間(プロジェクト
メンバー)の会話を可能とし、また、別な角度から神の存在問題に
切り込んでおり、非常に刺激的でした。
本作は、山本弘の「神は沈黙せず」と極めて対照的な内容となっており、
比べて読むと、非常に面白いと思う。
(これ以上書くと、ネタバレになるので、書けませんが。。。)
- 感想投稿日 : 2013年9月16日
- 読了日 : 2013年9月16日
- 本棚登録日 : 2013年9月16日
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