猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫 お 17-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年7月8日発売)
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感想 : 770
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11歳で体の成長が止まったチェスの天才の物語。

小川洋子版ナボコフのディフェンスといった感じ。

奇妙であり、風変わりな登場人物、また少しグロテスクでもあり、静謐な雰囲気の中この世界に引き込まれて行く。

おじいちゃん、おばあちゃん、弟、マスター、ポーン、ミイラ、鳩、老婆令嬢、総婦長、等々、何人かはいけ好かない奴も居るが、主人公を見守る素晴らしい登場人物、キャラクター達の温かさもこの作品の重要なピース。

盤上を8×8に潜む広大な海になぞらえ、棋譜は駒の奏でる響きであり、対局者と共に紡ぐ詩であり対話だという表現は、チェスの知識がなくともこの世界で読者を存在させてくれる。

ラストはあまりにも悲しい結末。

それでも最後のミイラの言葉に救われる。

「もし彼がどんな人物かお知りになりたければ、どうぞ棋譜を読んで下さい。そこにすべてのことが書かれています。」と。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年10月25日
読了日 : 2014年10月25日
本棚登録日 : 2014年10月25日

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