中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2004年10月19日発売)
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中国歴代王朝の殆どは盗賊による創業だ、
というユニークな視点から迫る中国王朝史。
漢の高祖劉邦から現中国共産革命の祖毛沢東までを
大盗賊だと宣うのだから痛快な書ではある。

先ず、著者は盗賊の発生する要件を
氏族社会と近代資本主義社会との中間段階にある農業社会とする。
農村の過剰人口が盗賊の発生母体だ。
農村地域に、働き場のない、あるいは働いても食えない人間が、不断に、また大量に発生する。彼らは流れ歩く閑民となり、盗賊となる。
中国には、大昔から20世紀の今日に至るまで、常に盗賊がいた。
その彼らが権力争いの表舞台へと勇躍登場しては歴史を作ってきたのだ。と。

彼らへの呼称は、単に「盗」といい、また「賊」ともいい、また「寇」ともいう。
清代以後には「匪」とも。
曰く、山賊、海賊、水賊、馬賊、妖賊、教匪、流賊または流寇、土賊、などなど、
活動場所や行動様式によって呼称が異なる。

漢の高祖、劉邦
明の太祖、朱元璋
清王朝の、李自成
太平天国の、洪秀全
そして共産革命の、毛沢東
これら建国の祖はなべて盗賊から出て王朝の開祖となったのだ、という訳で、
各々、章を設けてその経緯をたどる。

1927年に毛沢東が作った中国共産党の軍隊は、中国歴史上の、盗賊の流れに位置づけられるべきもので、
それは、マルクス主義を信仰し、不平知識人が指導し、貧しい農民の味方を標榜する、一大盗賊団なのだ、と。
実際、毛沢東らが政権を取るまでは、「共匪」「紅匪」「毛匪」と呼ばれていたことからも、時の権力や一般の民からは、中国古来からの盗賊扱いの位置づけだったことがわかる、と。
中国独特の「革命」思想にも触れえて、成程そうかと肯かせる。
著者は中国文学のれっきとした学者であり、故なき論を展開しているのではなく、歴史の事実を踏まえたものだけに説得力はある。
まあ、肩の凝らない書ではある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論-2/歴史.宗教.民俗系
感想投稿日 : 2011年10月6日
読了日 : 2004年12月8日
本棚登録日 : 2010年10月15日

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