明治大正翻訳ワンダーランド (新潮新書 138)

著者 :
  • 新潮社 (2005年10月1日発売)
3.24
  • (5)
  • (14)
  • (33)
  • (2)
  • (4)
本棚登録 : 181
感想 : 16
3

改めて<翻訳>という文学近代化の歴史に触れ、何かと興趣あり。

目次を見ると。
 プロローグ/明治の翻訳ローリング・トウェンティーズ
第1章  近代の翻訳はこの「一字入魂」から出発する
      /ユゴー「探偵ユーベル」森田思軒訳(明治22年)
第2章 訳文が生きるか死ぬかは会話文
      /バアネット「小公子」若松賤子訳(明治23へ25年)
第3章 超訳どころの騒ぎではない 
      /ボアゴベイ「鉄仮面」黒岩涙香訳述(明治25へ26年)
第4章  鴎外の陰に隠れはしたが
      /レルモントフ「浴泉記」小金井喜美子訳(明治25へ27年)
第5章 すべては憧憬にはじまる
      /ゾラ「女優ナナ」永井荷風訳(明治35年)
第6章 辛抱して読んでくれ!
   /トルストイ「復活」内田魯庵(明治38年)
第7章 遠く離れた日本で出世
      /ウイダ「フランダースの犬」日高柿軒訳述(明治41年)
第8章 原作はいったいどこに・・?!
      /アンノウンマン「いたづら小僧日記」佐々木邦訳(明治42年)
第9章肉体を翻訳する舞台
     /イプセン「人形の家」島村抱月訳(明治43年)
第10章 童話は初版だけが本物か
     /「模範家庭文庫」中島孤島他訳(大正4年)
第11章 絶好の売り時逃すまじ
     /リットン「ポンペイ最後の日」中村詳一訳(大正12年)
第12章 うっかり誤訳?意図的誤訳?
     /グリズマー「東への道」岩堂全智・中村剛久共訳(大正12年)
第13章 発禁,伏せ字を乗り越えて
     /モオパッサン「美貌の友」広津和郎訳(大正13年)
第14章 ノベライゼーションの草分け
     /ルルー原作,カーニー改作「オペラの怪人」石川俊彦訳(大正14年)

  著者自身も,二葉亭四迷,坪内逍遥,三遊亭円朝,尾崎紅葉,田山花袋,上田敏らを取り上げられなかったとしているが、残念。それに森鴎外も。
 しかし、自ら翻訳者としての目線はなかなか。
 これに類似のもので、政治的な著作の翻訳史もあれば面白そうだ。

〈鴻巣友季子〉1963年東京生まれ。翻訳家。お茶の水女子大学大学院在籍中より翻訳活動を開始。著書に「翻訳のココロ」など。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文化
感想投稿日 : 2010年5月24日
読了日 : 2010年5月24日
本棚登録日 : 2010年5月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする