改めて<翻訳>という文学近代化の歴史に触れ、何かと興趣あり。
目次を見ると。
プロローグ/明治の翻訳ローリング・トウェンティーズ
第1章 近代の翻訳はこの「一字入魂」から出発する
/ユゴー「探偵ユーベル」森田思軒訳(明治22年)
第2章 訳文が生きるか死ぬかは会話文
/バアネット「小公子」若松賤子訳(明治23へ25年)
第3章 超訳どころの騒ぎではない
/ボアゴベイ「鉄仮面」黒岩涙香訳述(明治25へ26年)
第4章 鴎外の陰に隠れはしたが
/レルモントフ「浴泉記」小金井喜美子訳(明治25へ27年)
第5章 すべては憧憬にはじまる
/ゾラ「女優ナナ」永井荷風訳(明治35年)
第6章 辛抱して読んでくれ!
/トルストイ「復活」内田魯庵(明治38年)
第7章 遠く離れた日本で出世
/ウイダ「フランダースの犬」日高柿軒訳述(明治41年)
第8章 原作はいったいどこに・・?!
/アンノウンマン「いたづら小僧日記」佐々木邦訳(明治42年)
第9章肉体を翻訳する舞台
/イプセン「人形の家」島村抱月訳(明治43年)
第10章 童話は初版だけが本物か
/「模範家庭文庫」中島孤島他訳(大正4年)
第11章 絶好の売り時逃すまじ
/リットン「ポンペイ最後の日」中村詳一訳(大正12年)
第12章 うっかり誤訳?意図的誤訳?
/グリズマー「東への道」岩堂全智・中村剛久共訳(大正12年)
第13章 発禁,伏せ字を乗り越えて
/モオパッサン「美貌の友」広津和郎訳(大正13年)
第14章 ノベライゼーションの草分け
/ルルー原作,カーニー改作「オペラの怪人」石川俊彦訳(大正14年)
著者自身も,二葉亭四迷,坪内逍遥,三遊亭円朝,尾崎紅葉,田山花袋,上田敏らを取り上げられなかったとしているが、残念。それに森鴎外も。
しかし、自ら翻訳者としての目線はなかなか。
これに類似のもので、政治的な著作の翻訳史もあれば面白そうだ。
〈鴻巣友季子〉1963年東京生まれ。翻訳家。お茶の水女子大学大学院在籍中より翻訳活動を開始。著書に「翻訳のココロ」など。
- 感想投稿日 : 2010年5月24日
- 読了日 : 2010年5月24日
- 本棚登録日 : 2010年5月24日
みんなの感想をみる