だれかのいとしいひと

著者 :
  • 白泉社 (2002年4月1日発売)
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本棚登録 : 269
感想 : 38
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短編集8篇 『転校生の会』『ジミ、ひまわり、夏のギャング』『バーベキュー日和(夏でもなく、秋でもなく)』『だれかのいとしいひと』『誕生日休暇』『花畑』『完璧なキス』『海と凧』
酒井駒子さんの挿画がとても素敵。

角田作品の登場人物には珍しくない、衝動的で少々道から外れた行動に驚く。縁もゆかりもない“全国転校生の会”に参加しちゃったり、別れた恋人と住んでいたアパートに留守中こっそり入っちゃったり、複数の友達の、それぞれの彼氏とすぐ寝ちゃったり・・・。ちゃんと後先を考えているのかよ!と突っ込みたくなる(笑)
一番印象に残ったのは、表題作でもある『だれかのいとしいひと』もうすぐ別れようと思っている恋人と、7歳の自分の姪が仲良しで だけど、自分と恋人が別れたら、姪と彼の関係も断たれてしまう。多分姪は「憂うより先に、忘れてしまう」だろう。 今はこんなに楽しく一緒の時間を過ごしているのに、その思いのはかなさを思うととても切なくなる。大人になりふと思い出すそこの居ただれかのいとしいひと。そういう経験ってある、あると昔を思い出したりして。
誕生日休暇の旅先のバーでひとり飲んでいた主人公が結婚式前夜の新郎と偶然隣り合わせ、運命の悪戯に翻弄されたその男の話を聞く『誕生日休暇』も少しシニカルなおとぎ話みたいでよかった。このふたつの話なら★5つ。
不幸が雪崩落ちてくる救いのない『花畑』と妄想の気持ち悪さにちょっとひいた『完璧なキス』が★1.5なので総合すると★3という評価をつけたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ヒューマンドラマ
感想投稿日 : 2009年7月21日
読了日 : 2009年7月21日
本棚登録日 : 2009年7月21日

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