①女性の労働史・日本型雇用の生成史に関する歴史的記述、②日本型雇用がいかに女性の活躍を難しくしているかという現状の分析、の両点につき興味深い分析がなされている本だと思います。
①まず、第一点について。日本のメンバーシップ型の雇用が、戦時中の皇国勤労観を基礎として、戦後の労働運動の成果として受け継がれたという記述など、さまざまな面白い歴史的記述がなされていました。
②第二点について。日本のメンバーシップ型雇用は、銃後の女性によって支えられた男性をモデルに組み立てられたものであるがゆえに、男女平等も、女性がそうした男性のように働くことができる平等とされており、育児や家事などの負担を負う女性の活躍を難しくしていることが指摘されています。
育介法での労働時間規制(17・18条)への言及などを通して、無限定な労働義務を課す日本型メンバーシップ雇用の異常性が炙り出されていく過程が非常に面白い記述となっていました。あとがきで「本書の特徴」として、女性労働を「徹頭徹尾日本型雇用という補助線を引いて、そこから論じたところにある」としていますが(250頁)、むしろ、女性労働を補助線にして日本型雇用を論じた本といった印象があります。
本書で指摘されているとおり、ジョブ型雇用にはスキルのない若者の雇用問題もあるので、問題は簡単ではないと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
法律分野新書・入門
- 感想投稿日 : 2016年1月6日
- 読了日 : 2016年1月6日
- 本棚登録日 : 2016年1月6日
みんなの感想をみる