無料の貸本屋と揶揄されることもある日本の図書館と違い、著者の住むイタリアでは図書館は学生や研究者のための場所という意識が強く、一般の人が親しみを持てる場ではないという。このことに危機意識を高めた著者は、図書館を本来あるべき「単に本やDVDや映画を借りる場所であるだけでなく、居心地が良く、友達に会ったり、アペリティフを飲んだりするためにやってくる場所」にするべく、図書館の改革に乗り出す。
図書館サービスの現状を変えるだけでなく、図書館への市民の認識をも変えることになる、楽しく、有意義で、建設的な新しい図書館作りの詳細は本書に譲るが、彼が目指したのが、「陽の降り注ぐ明るい広場や華やかなショッピングアーケード」であったことは示唆に富む。
モバイル端末がどんなに進化しても、「人は人と出会い、経験を共有し、文化活動を企画したい」と願う。一方で、図書館は知の公共機関であり、知識経済を支える屋台骨になるべき場所でもある。著者の作る図書館にはこれらのための機能や工夫にあふれ、その豊かさに羨望を覚えずにはいられない。
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- 感想投稿日 : 2014年2月10日
- 読了日 : 2014年2月10日
- 本棚登録日 : 2013年10月31日
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