中野京子が名画の背景を主観と批評を交え読み解いていくシリーズ第三弾。
正直絵画にはそこまで興味がなかったのだが、時にユーモアたっぷりに、時にエスプリを効かせ、時に辛辣な観察眼を発揮し綴られていく文章は名人芸の域。当時の時代背景や風俗と巧みに絡め、作者の人生や心情をも投影させるような文章は読みやすく面白い。
絵画そのものの迫力もさることながら、その絵が描かれるに至った背景を知る事によって、人間性の深淵をも抉り出すような凄みと深みが増す。
今巻で特に印象的だったのは「悪しき母たち」。
某翻訳恐怖小説短編集の表紙にも採用された有名な絵だが、不勉強な自分は恥ずかしながらこの本を読むまで作者はおろかタイトルさえ知らなかった。しかしまさか堕胎の罪を犯した女(娼婦)の罪と罰をテーマにした絵だったとは……
章立てが短いので集中力を途切れさせずに好きな所から読むことができるのも親切。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年8月26日
- 読了日 : 2017年8月26日
- 本棚登録日 : 2017年8月21日
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