あとがき、ことに、引用されたボードレールのことば、「あらゆる模様のうちでアラベスクはもっとも観念的なものだ」という一節が、テーマにも似て十二篇の物語を貫いているように思う。しかし、どの物語も、性行為との縁・無縁はおいて非常にエロティックであるように、私には感じられた。また、『遠隔操作』では、自分との類似をすこしだけ感じてふふっと笑ってしまったけれど、いかにも博学な澁澤龍彦らしい物語群であるだろう。あらゆる文章が知識によって裏付けられ、本来の意味での換骨奪胎とを成し遂げており、幻想文学たる条件を自ら示している。ふわっふわの現代小説に疲れたときに、とくに読み返したい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2017年5月7日
- 読了日 : 2017年5月7日
- 本棚登録日 : 2017年4月26日
みんなの感想をみる