本書のメッセージを乱暴に一言で表せば、「効率を求める合理性への提言」ではないでしょうか。内容は一見すれば「ディズニーリゾートはこうしたから成功したのだ」と読み取れなくもないですが、そのように読めば、本書が伝えている提言を見落としてしまうのではないかと思います。
本書から私は、ディズニーを貫くSCSE(Safety'安全' - Courtesy'礼儀正しさ' - Show'ショー' - Efficiency'効率')、つまり”ゲストの幸せ(ハピネス)に対する合理性”と言う理念が印象に残りました。
「合理的」と言う言葉は、えてして「効率」がその目的とされ、あたかも「合理的であることが最も効率的で最善である」と言うように受け取られがちです。しかし、効率一辺倒の合理性が見失うものは多く存在します(例:マニュアル人間)。
ディズニーリゾートにおいては、合理性の目的は「効率」ではなく「ゲストの幸せ」です。「幸せ」と言う、状況に応じて常に変わってゆく目的のためには、マニュアル人間である訳にはいきません。マニュアルも、目安程度にしか過ぎないと言います。
「幸せ」を目的とする合理性は、「効率」を目的とする合理性の答えを覆す場合もあります。
例えば掃除の鉄則は「上から下、奥から手前」というものです。これは効率的な合理性です。ところが、雨天で滑りやすい路面が後回しと言うのはゲストの「安全(幸せ)」を後回しにすると言うことになってしまう。
このとき「幸せ」を求める合理性が、「効率」を求める合理性よりも上位に立つのです。
こうした考え方は、決して「ディズニーリゾートの讃美」ではなく、効率を追求する合理性(例えば”マクドナルド化”と関連)に対する一つの答えではないかと、私は思いました。
- 感想投稿日 : 2012年8月14日
- 読了日 : 2012年8月14日
- 本棚登録日 : 2012年6月24日
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