『信さん』
九州、炭鉱の町。三十年以上前にそこにいた「私」と信サンはいた。
「私」の二つ年上の信サンを知らないものはいなかった。小学五年生にして数多くの悪行を働いていたからだ。
学校帰りの「私」がカツアゲされそうになったとき、助けてくれたのは信サンだった。通りかかった巡査は信サンをカツアゲの犯人と決めてかかるが、「私」の母は彼が犯人ではないと気づく。
そうして芽生えた「私」と信サンの友情、「私」の母への信サンの想い、
信サンの腹違いの妹。
更生していく信サンが愛を覚え、妹のために東京で働いて死んでしまうまでの物語。
『遥い町』
朝鮮人のヨン君はいじめられていた。十一歳だった。
「私」は彼と仲がよかったが、彼は校内の不良グループのスネオみたいなSに目をつけられ、殴られた蹴られ涙を流していた。
そんななか、ヨン君は家族と朝鮮人学校のある大阪へと引越せることになる。嬉しそうなヨン君。
出発の日、S達はヨン君を裏山へと連れ込み、徹底的にやってしまうと意気込む。
裏山に駆けつけた「私」が見たものは、腕が折れたと泣き喚くSやボロボロになった少年たち。
そこでやっと気づく。
ヨン君はいじめがつらかったんじゃなくて、我慢するのがつらくて泣いていたのだと。
本当は強いのに抵抗せず我慢していた朝鮮人の少年。
戦後、朝鮮人が日本で生きるということは、強く我慢することだった。
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ベタな展開が個人的にすごく好み。ツボを押された感じ。
最高に面白かった。
- 感想投稿日 : 2013年3月17日
- 読了日 : 2013年3月12日
- 本棚登録日 : 2013年3月12日
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