十八世紀ヨーロッパ監獄事情 (岩波文庫 青 465-1)

  • 岩波書店 (1994年10月17日発売)
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*原著初版は1777年に刊行。

*海外旅行の困難な時代のなかでフィールドワークに基づく詳細な監獄の記録。

*イタリア人ベッカリーアの『犯罪と刑罰』(1764)とよく比較される。「書斎派」の文筆家としてのベッカリーアと、現実的な改良家としてのイギリス人ハワード。

*解説より抜粋。
 18世紀末以降、とくに19世紀前半のイギリスは、「改革の時代」であった。ベンサムをはじめとする功利主義者や復活した福音主義の信奉者たちがその中心的な推進者であった。(奴隷貿易の廃止、工場法の制定など)折からの都市化や工業化がもたらした経済や社会の歪みの是正を含んだ改革が多かった。ハワードの監獄改革運動は、こうした諸改革のごく初期の一例とみることができる。事実、監獄改革はこのあとも、一望のもとに全体が監視できる円形監獄である「パノプティコン」を提唱したベンサムらに受け継がれた。
 ただし、19世紀が深まるにつれ、犯罪・犯罪者観が変化し、細分化し、刑罰および刑務所の性格もしだいに変化し、多様化していく。ハワードの改革は、このように急激な近代初期の歴史的変化への対応の、いわば第一の局面だったのである。
 監獄にかんしても、19世紀の改革は、刑罰の目的についての机上の論争や、上述のパノプティコンからペントンヴィルに至るモデル監獄(刑務所)の設立・運営の試み、監獄の中央統括化など、システマティックなものとなった。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: えっせい/そのほかのほん
感想投稿日 : 2009年1月31日
本棚登録日 : 2009年1月31日

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