小説のテーマは色々ありますが、活版印刷を持ってくるというのは結構良い取り合わせだなぁと感じました。
実際のこの本自体はDTPな訳なので、そのものの風情を伝えられないのは難しいところ。たとえアナログレコードのような音でスマホから音楽が流れてきても、それはレコードを聴く体験じゃない訳で。
でも、本著の物語の中から活版印刷の魅力は伝わってきました。筆致自体も、まるで1文字ずつ丁寧に組み合わせて印刷する活版印刷を体現しているかのように、言葉と言うか、文字をとても大事にしているのが伝わってきます。
登場人物たちが穏やかに、緩やかにバトンを繋いでいって綴られていく4つの短編は、読んでいて落ち着くような気持ちにさせられます。
川越の古い印刷所という設定も素敵だし、未来の無い技術(活字の鋳造機はもう造られていないとか)である活版印刷が、関わった人の未来の可能性を創っていくという枠組みも良いのでは。
電子化が進むご時勢ですが(このレビューも含め…)、実際のものに触れた時の驚きや喜びを呼び覚ましてくれるような1冊でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ライトノベル
- 感想投稿日 : 2017年10月6日
- 読了日 : 2017年10月6日
- 本棚登録日 : 2017年10月1日
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