図書館の魔女(下)

著者 :
  • 講談社 (2013年8月9日発売)
4.32
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本棚登録 : 913
感想 : 146
4

上下分冊の下巻。
上巻で丹念にかかれた設定を踏まえて、下巻で物語が一気に動き出す。
上巻の段階では、面倒なもののひとつであった言葉の概念が、活き活きと動きだした。
大国同士がにらみ合い、まさに戦端を開こうとしているそのときに、図書館の知恵を使って窮地を乗り越え、新たな展開に持ち込むやり取りのスリリングさ。
そして、図書館の魔女が負った呪いを解くための旅と戦い。
さらに、そのなかで明らかになる新たな秘密...
下巻の、活躍を下支えする上巻の基礎。
上巻でくじけなくてよかったと、最後にはきっと思える面白さだったと思います。
ただ、下巻が終了してなお、そこには新たに作られ、積み残されたいくつもの種が...
これは、きっと指輪物語における「旅の仲間」に相当する序章なのだと思います。作者の頭の中には、壮大な指輪物語のような世界が広がっている。そして、そのなかの登場人物がいきいきと物語を語っているのでしょう。

ただ、トールキン好きの目からみると、いくつ残念な点がありました。
ひとつは、色彩感覚の少なさ。
トールキンの描く世界には、ガンダルフのマントが灰色から純白に変わることで象徴されるように、鮮やかな色彩がありますが、本書には暗い色調の自然とくすんだ色の街中の情景しか現れてこないような気がします。
そして、もうひとつは自然の描写。
描かれる自然に大きさ、広がりが感じられない。
指輪物語には映画のイメージも刷り込まれている部分が多分にあるのかもしれないが、やはり元座区の段階から広大な自然が感じられたような気がします。
本書から感じたのは、地図上どのあたりにいるのかな?という場所の確認だけだった。多分に好みと感覚の問題だとは思いますが。

ともあれ、読んでよかった下巻まで。
図書館の魔女を手に取るなら、下巻まで読むのは必須です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2016年6月30日
読了日 : 2016年6月30日
本棚登録日 : 2016年6月30日

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