しばらく前に職場で大きな人の動きがあったとき、ふと頭に浮かんだこと。
そういえば、自己啓発書とか、ビジネス書って、今までちゃんと読んだことなかったなあ。
何かについて知りたいとき、だいたいは本を読むのに、日々のほとんどを費やす仕事については灯台もと暮らしだったのかも……。
というわけで、少しでも心の支えを探すべく、自分の中で開催が決定された“自己啓発書・ビジネス書の古典や定番を読もう!キャンペーン”。
第一弾として昨年読んだデール・カーネギー『人を動かす』が面白かったので、第二弾はこちらを。
著者ナポレオン・ヒルはアメリカ人。鉄鋼で財を成した実業家アンドリュー・カーネギー(※上記のデール・カーネギーとは別人)の命を受け、主にアメリカの経済的成功者にインタビューを行い、20年かけて抽出した成功ノウハウの概要をまとめたのが本書、ということである。
「ということである」、というのは、読んでいてどうも私には著者が行ったというインタビューが、現実味をもって感じられなかったから。
本書の書き方は、例えば
成功するには失敗を失敗と考えないことである、
Aが成功したのは失敗を失敗と考えなかったからである、
という具合なのだが、成功者たちがどんな時に何を考えて行動し、それをどんな風に自分の言葉で表現したかをもっと読みたいのに、という気持ちを終始ぬぐえず。
(この本を好きな方、ごめんなさい。)
とはいえ、本書の不思議なところは、読んでいる内に、成功者へのインタビュー云々は、実はそんなに重要じゃないのかも……と思えてくる点。
富を得よう、富を得たいという言葉がオブラートにつつまずに何度も繰り返されることに最初おどろくものの、いつしか慣れて、信念をもて・想像力を働かせよ・明確な目標を紙に書き具体的な実現手段を考えよ、などのメッセージを読むごとに気持ちが高揚してきて、本当にそうなのかも、と思えてくる。
自己啓発書って、そこに書いてある言葉を頭に通すことで受ける一種のセラピーのようなものなのかな。
だから、書かれている内容の具体性や客観性よりも、メッセージが伝わることや勢いが重要なんだろうな。
そして、望まれているよりも多く人に奉仕せよ、という言葉が、本書ではあくまで自分の目的を達成し、自分自身の主導権を握るための手段として提案されている点が最も印象的だった。
この意味を含んだメッセージは、本が書かれて80年ほどたった今の日本で働く私もしばしば耳にするけれど、自分で自発的に行うのか、人から求められて行うのかで、180度意味が変わると思う。
例えばコピーを頼んだとして、それをこちらがリクエストした以上に丁寧にまとめてもらえたらもちろん嬉しいけど、それを例えば朝礼(?)などで気を効かせ合おう、などと推奨することはなんか違うというか。
この本の原型がアメリカで発表されたのが1937年。
本書の様々な提案は、現代の日本社会でも浸透しているけれど、その分もとの意味と離れて言葉が一人歩きしていることがあるのかも。
奉仕は誰かを動かすために使う言葉じゃないこと、人から求められても鵜呑みにしないこと、そして、無意識にでも人に対して自分がそれを求めることがないように、よくよく覚えておこう。
まあ、偉そうに言ってみても、また職場に行って、メールやら電話の対応にオタオタしている内に、頭から吹っ飛んじゃうんですけどね。
世の中には色んな種類の本があるんだな、何事も元をたどってみることは大事だなと思わせてくれた上下巻2冊でした。
- 感想投稿日 : 2017年9月5日
- 読了日 : 2017年9月1日
- 本棚登録日 : 2017年9月1日
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