「富士日記」はまだ読んでいない。
とっておきにしてあって、まだ手をつけていないで楽しみにおいてある。
先に読んだこの「日日雑記」は、武田百合子さんの最後のエッセイ集とのこと。
この本の書籍版が刊行された1992年7月の、わずか10か月後に武田百合子さんは亡くなっています。
もとの文章は雑誌の連載であって、最後の文章は1991年の4月だからもう少し前の時間ではあるけれど、そんな、人生の晩年を綴ったとは思えないほど、ここに登場する生活はいきいきとしていて、あまりにも普通なことに驚いてしまいます。
それにしても、日常にこれほど「小事件」が起こるのは、その人の身の上が特殊だからなのか、とおもったりするけれど、やっぱり、どれだけのことがらを日常生活からすくい上げることができるのか、が境目なんだろうか。
たまたま乗ったタクシーの運転手さんに身の上話をされて、目的地に着く頃には大泣きされて、なんて事件、自分には起きそうもない。
やっぱり「小事件」は、人を選ぶのかな。
水族館で水槽の中を泳ぐいきもの達を見て、自分ならば「あのイカ、おいしそう」とか「鯛ってきらきらきれいだなあ」ぐらいしか連想ができないのに、百合子さんは「飼うならこれだ」とか、「これは飼えない」とか、連れてくることを前提にチェックしているあたり、見学というものひとつとっても、人生の楽しみ方ってまだまだあるんだなあ、と思い知らされました。
これだけ細かい「雑記」を読んでもしんどくないのは、感情がほとんど入り込んでこないから。
だから淡々としている日常のように思えるけれど、そうでなければもっとぐったり疲れそう。
そんなところが、武田百合子さんの日記を皆、好きだと思うところなのかな、と考えたりした。
それにしても、お相撲さんの背中を見て、切り取ってカバンにして持ち歩きたい、だなんて。。。。もう、完敗です。
これから相撲中継、そんな目で背中を品定めしちゃうよ~!
- 感想投稿日 : 2012年6月29日
- 読了日 : 2012年6月17日
- 本棚登録日 : 2012年6月17日
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