柳田国男全集 23 (ちくま文庫 や 6-23)

著者 :
  • 筑摩書房 (1990年9月1日発売)
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帰納法は特殊から普遍を見出す。よって必然性ではなく蓋然性に留まる。演繹法は普遍的命題から個別的命題を論理規則に基づいて見出す。よって必然性となる。

柳田と言う人は帰納的な人である。

帰納は反省に依っているため総合判断であり改善への志向がある。蓋然性とはそいった世界改善への志向を示している。

演繹は初めに普遍的命題が前提となりそこから分析判断で個別的命題が必然性として導かれる。

演繹を否定して帰納的思考だけで生きるのは不毛であり帰納法を否定して演繹的思考だけで生きるのは空虚である。

柳田に学んだことは帰納的に生きるということは演繹法を帰納的に見ていくということである。演繹を比較し吟味する対象としてみることにより帰納的生きることでありそれにより世界(自己・学問・世界)の改善を可能とする。経世済民とはこういう思考によってありえる。

柳田はよく自分の世界だけで決するのではなく他者の世界と比較し吟味するとによることを大切にしている。それは自民族中心主義への批判としてあるように見える。

演繹的思考が支配すれば暴走する。しかし帰納的思考は反省に依り暴走を止めることができる。柳田民俗学の運動は帰納的思考をできるだけ多くの人に広めるための運動である。なかなか素晴らしいことだと思う。

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感想投稿日 : 2015年1月24日
読了日 : 2015年1月24日
本棚登録日 : 2015年1月24日

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