耳で考える ――脳は名曲を欲する (角川oneテーマ21 A 105)

  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年9月10日発売)
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5

「バカの壁」の作者 養老孟司さんと、
ご存知、宮崎アニメや「おくりびと」の作曲をした 久石譲さんが
耳、音、聴覚をキーワードに、語り合う対談です。
考えただけで、わくわくする方同士の対談!

いや~、一気に読んでしまいました。

「なぜ人は音楽で感動するのか」など
人間が音楽を美しいと感じるメカニズムについて徹底的に語り合っています。

久石さんが音楽について感じていることを語ると、それは人間の脳がこんな風に働くから
音に対してそう感じるんだね~と養老さんがメカニズムを解説する。

そして、最終的には聴覚の持つ神秘の力を問い正す。

面白くないわけがない!というのが感想です(笑)

例えば、映画音楽の第一人者、久石さんが素朴な疑問としてあげているのが、
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映画に音楽をのせる際、厳密に映像に合わせて音楽をつけると、映像より音楽の方が先に聞こえてくるという現象が起きるということ。

映像は光だから、普通に考えると音速より早いはずなのになぜ??
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それに対し、養老さんが
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ある見たもの、聞いたものに対して
脳の神経細胞が伝達して意識が発生するまでの時間が、視覚系と聴覚系では違う。
だからズレて聞こえる。
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という説明をします。
そして、
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その2つの神経は元来別々のものだから、根本的にはそれは当然こと。
それを一緒に組み合わせて考えているのは人間だけだ。
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などと、脳のメカニズムを解説するのです。

他には、久石さんが
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今の時代、目から入ってくる情報にものすごく依存度が高くなっている気がする。
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と言えば、
養老さんが
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意識を失った人が意識を取り戻す時も、最初に耳が回復し、次に目が開くのを考えると、
生きていくときに基本となるのは、目よりもむしろ耳ではないか。
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という意見を述べる。

音好きとしては、音についての対話というだけで興味わくものですが、
それプラス「へ~~、そうなのか~」ということも多い。

音への感覚(それも久石さんの研ぎ澄まされた感覚)に養老さんのメスが入るという感じでしょうか。

音好きな方に(特に理系の方 笑)
オススメな本です。

ちなみに、養老さんは音楽は基本「ながら聞き」らしいです。
仕事の邪魔にならないものが名曲らしいですよ(笑)
本当に集中しているときは聞こえない。
それでも思考の途中で、ふっと気持ちがよそへ行く、そういう時に聞こえてくる音楽が気持ちのいいものだといい。
「聴きなさい!」とばかりに何かを強く訴えかけてくるようなものだと
具合が悪い。
なーんて書いてありました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 対談
感想投稿日 : 2015年11月18日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年11月18日

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