世紀末の詩

著者 :
  • ワニブックス (1998年12月1日発売)
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感想 : 93
4

愛してると口で言うのはたやすい。

では、愛してることを態度で示すにはどうすればいい?


野島伸司の書いた本「世紀末の詩」が今手元にある。

ふいに思い出したように読み返す1冊。

ドラマ化もされ、それも見ていたけど、ぜひこれは

活字で読んでもらいたい。

長編小説だけど、物語は一つ一つ短くまとめられていて

途中から読んでも飽きない構成になっている。



愛とはなんだろう。この究極の問いに真正面から

取り組んでる物語の姿勢がとても好きでした。

人それぞれの愛の形があり、全ての人に共通する形など

あるはずもないけれど、


最初はDNAの吸引的な入り口から惹かれあう男女。

恋が消えてしまった後、愛に到達するか、そのまま終わりを

告げるか、その境目は何なのか、人は愛しい人がいながら

なぜ新しい人を好きになってしまうのか?

それは避けられないことだったのか。


愛し続けるという事がどんなに難しい事か、だけどそういう相手に

めぐり合えた事がどれほど大切でかけがえのないものだったか

そういうものを改めて考えさせてくれる一冊でした。


夏夫と冬子は長く恋人同士として付き合ってました。

だけど夏夫に好きな人が出来ます。

相手は教授の娘で自分の出世も約束されてる。

そのとき、冬子は妊娠してました。

だけど新しい恋に夢中な夏夫にはそれさえ邪魔だった。

夏夫は冬子を捨て、冬子はその後姿を消しました。



やがて死期が近づいて、夏夫は振り返って思います。

自分が本当に愛していたのは冬子ただ1人だった。

新しい恋に一時的に夢中にはなったものの、

それは愛にまで到達できなかった。

死ぬ前にせめて、冬子に会って謝罪したい。


そして、冬子も夏夫のことを一生想い続けていました。

夏夫と冬子、季節が繋がらない2人の名前を

幾千もの秋でつなげれるように

生まれて来た娘に「千秋」という名前をつけて、

たった1人で育てていた。

だけど、夏夫がそれに気付いた時はもう遅かった。

2人の間にはもう、時間が経ちすぎていた。




本当の愛に到達しながらも、人はそれをたやすく手放してしまう。

人ってどうしてこんなに愚かで身勝手なのだろう。

そして、どうしてこんなにも愛おしいのだろう。



人は完全だから愛されるわけじゃない。

弱いところや、不完全さを愛することが出来るから

だから、人間なんだなって、そう思う。


そして愛することにはちゃんと資格がいる。





主人公の亘が好きになった人は既にフィアンセがいて

結婚式を目前に控えていた。

彼女が結婚する前の日、亘は彼女に言います。


  「明日、僕はあなたを連れ去りに行きます」


彼女は言います。


  「・・・・待ってます」


亘は続けて言います。


  「里見さん、愛の形が見たくありませんか?

   ・・明日見せてあげます」





でも、彼は結婚式場には姿を現さない。

それが彼の選んだ愛の形。


そして、あたしはやっぱりこの主人公が愛おしい。





      進もう 君のいない道の上へ

               (Mr.Children くるみ)




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

  ハローベイビー
  
  不幸の手紙は僕が破ろう

  この世に終わりなんかないんだよ

  君を愛する僕がいるから

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆

     

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2011年6月20日
読了日 : 2008年1月20日
本棚登録日 : 2011年6月20日

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コメント 1件

trapxnestさんのコメント
2011/06/20

これ、竹野内豊の出てたドラマの原作?
ドラマをちゃんと見てないから、読んでみたいな。

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