生きている者の苦しみとして避けられないものは、
まぁたくさんある。
老いコワい。
病もコワい。
死もコワい。
人と違う事がコワい。
世間の目がコワい。
コワいものとは実際目を合わせたくない。
なのに『炎上する君』では、
作者が「ほ~ら、コワい、コワいよ。コワい目にあわせてあげるよぉ」と、脅しをかけてくる。
嫌だな。
思い当たる節のある私は胸が痛む。
ズキン、ズキンと。
でも、言い出したのは西さんだから、最後は責任持ってくれるよね?
救いのオチを用意してくれているよね?
今、読み終えて思い返しているのだが、
救いのオチ、というよりは
全く別の事を思った。
それは、良寛さんのこと。
良寛さんは
何事も観察する事が大好きで、
自然や花や虫と仲良しであったが、
晩年、老いの身で観察し続けたのは
病や死、自分の死生観についてだった。
私が強く胸打たれるのは、
寂しいと、孤独だ、と、まるで別の誰かを見てるかの様に素直に発せられている言葉に、だ。
すっかり悟りを開いているかの様なあの良寛さんでも
独りは寂しい、と死とは恐ろしいものです、と。
ただ、目を逸らさずにそいつらと向き合う意志を強く持つ事が出来るのならば、突破口も見つかる。
逃げようと思えば、<今のうちは>逃げる事が可能な黒雲をじっ…と見据えて、追い払ってやろうじゃないか。
良寛さんの心に通じる短編集であった様に
私は思えた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年2月19日
- 読了日 : 2016年2月19日
- 本棚登録日 : 2016年2月19日
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