毒見師イレーナ (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン (2015年7月18日発売)
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本棚登録 : 677
感想 : 71
4

面白かった♪
最初、タイトルを読んだときは毒見師の話という事で藤沢周平の「武士の一分」を思いながら、そんな話かとあたりをつけていました。
が、
読み進むうちに、展開する世界はちょうど栗本薫さんの「グインサーガ」のようであったり、あるいは上橋菜穂子さんの「獣の奏者」。絵で言うならレンブラントに代表されるような光と影が曖昧な世界でした。
つまり魔術師が跋扈する妖しいヨーロッパの中世。
独特の陰鬱で窒息しそうな重苦しい日常の中で、それを唯々諾々と受け入れずなんとか自我を見つけよう、掴もうとする主人公や人々が絵画的に描かれているのです。
読むほどに惹き付けられ、最後は一気でした。
信じていたものに裏切られ不信でいっぱいの主人公が、自らの運命を知恵とそして愛とで切り開いていく、という本は数多くあるので、そのテーマ自体はなんら目新しいとは思わなかったのですが、
主人公を毒見師にしたというのは、なかなか面白かったです。
毎日、生きる事と死ぬ事の線上を行き来させられ、
諦めと失望と自棄に陥りながらも、「生き抜く」という目標を始めは夢のように、そして次第に現実の物として掲げていく主人公は逞しく、そして清々しいです。
戦いのシーンも丁寧に書き込まれていて視覚として頭に入り込んできます。
主人公以外の人物についても、悪者は悪者らしく、善意の人はそのように描かれ、ある意味「安心」のキャラクターたちです。
何よりもヒーロの押さえた人格が渋くて知的で、なおかつ情熱的です。
はじめはメタ視点で読んでいた私も、いつのまにか、自分とイレーナを重ねて同じように嘆き、悲しみ、そして喜びました。

と、言うことで、
とっても素敵な本に出会えたと思う私です♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年7月25日
読了日 : 2015年7月25日
本棚登録日 : 2015年7月25日

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