砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2009年2月22日発売)
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5

寂れた鳥取の田舎町。


芸能人を父に持つ
13歳の美少女転校生・
海野藻屑(うみのもくず)の
バラバラ死体が発見されたニュース。


物語は
事件が起きる
1ヶ月前にさかのぼる。


主人公は
中学2年で13歳の
山田なぎさ。

父を早くに亡くし、
美貌の兄は引きこもりに。

貧困から抜け出すために、
中卒で自衛隊入隊を考える
現実的な少女。


自分を人魚の姫だと言い嘘ばかりつく
お金持ちの転校生・海野藻屑を
なぎさは本能的に避けながらも
いつしか友情のようなものが生まれて、
友達になる2人。




なぜ藻屑は
無惨な死体となって
殺されねばならなかったのか?


犯人は誰なのか?



読み進めるうちに
海野藻屑の
隠された「真実」を知らされるだけに、
不幸な結末を辿る過程が
読んでいて本当にツラいです(>_<)



貧しさから脱出するため、
なぎさが必要とするのは実弾。


ここで言う実弾とは、
生活を支えるお金になる
実体のある力のこと。


なぎさから見れば
藻屑が語る
嘘で塗り固めた物語は、
空想的な砂糖菓子の弾丸。


いくら語ったところで
金にならない
役立たずなもの。


しかし徐々に藻屑の境遇や
彼女のおかれた状況が分かるにつれて、

嘘つきの美少女・藻屑は、
自分の運命と戦うために
威力のまるでない
砂糖菓子の弾丸を
『撃ち続けるしかなかった』ことが
明らかになります…(≧∇≦)



自分も施設で育ち
16歳までは
金や力がすべてだと考えて生きてきたので
なぎさの苦悩は痛いほど解る。


だけど空想したり
妄想することは
決して砂糖菓子の弾丸なんかじゃない。

戯言やファンタジーを信じる勇気を持つことこそが
悪意の拡散を抑止し、

諦めの鎖を絶ち切る
武器になるんだと
生きる中で
自分は学びました。




思春期にこの小説と出会えた人が羨ましい。

自分の核となり
その後の生き方を左右していたと思うから(^_^)



役に立たない弾丸を撃ちまくっていたのは
藻屑だけじゃない。


誰の胸の中にも
砂糖菓子のテロリストは
眠っている。



傷だらけの思春期を送った
すべてのティーンエイジャーだった人へ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年4月11日
読了日 : 2012年4月11日
本棚登録日 : 2012年4月11日

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