自分がハマりそうな小説って
読んでる途中で
一瞬にして解るって感覚ないですか?
『あっ、俺今、
スゴいの読んでる…』
って。
もっと言えば、
初めの1ページや
冒頭の描写だけで
自分がこの小説を
『好きになる予感』って
解るんですよね。
この小説も
「鶴の湯」の銭湯から始まる
書き出しからしてもう、
吸引力のある文体で
一気に惹きつけられたし、
これから始まる物語の期待に胸が膨らむ
素晴らしい導入部だと思います。
主人公ハイジの思惑で集められた
竹青荘に住む10人の素人選手が、
箱根駅伝を
たった半年の期間で
目指すことになる
胸を打つストーリー。
(もうこの気概ある設定だけでワクワクしてくるし♪)
自分も中学時代
陸上部だったし、
今もボクサーなので
走ることは欠かせません。
ランナーは孤独です。
だけど走ることを
体にインプットした人間にしか
分からない感覚って
確かにあるんです。
足を前に踏み出すだけで
世界が変わる感覚。
両耳をすり抜けていく風の音。
街や花や空気の匂い。
その時間にしかない
この星の奇跡の色を感じられるのも、
走る者の特権です。
人はなぜ走るのか?
一生に一度くらいは
本気になってみたいから。
生きてるって意味を
実感したいから。
昨日までの
ふがいない自分に克ちたいから。
人の数だけ理由なんて
あるんだろうけど、
生きるってこと自体が
何かを越えてゆく
『強い姿勢』なんだって
思い知るためにも、
人はいつか、
走り出さなきゃならない。
いらないもの、
ごちゃごちゃしたもの、
余計な考え、
全てすっきり削ぎ落として、
清いまでに
シンプルな『核』になるために。
人は走ることで、
自分にとって
本当に大事なものが何かが
分かるような気がします(o^-^o)
リアリティがないという批判的な声も聞くけど、
しをんさんが伝えたいことは
そこなんだろうか?
何かを越えようとする
『意志の形』や
『生きる姿勢』の
在り方を示した作品だと
自分は受け取ってます。
どんな突拍子のない設定だったとしても
、
どれほど心が動いたかによって
人間は作られていくし、
小説の醍醐味は
そこだと思う。
そういう意味で
これほど心動かしてくれる小説は
そうそうないと思うんだけど
どうだろうか。
- 感想投稿日 : 2012年7月10日
- 読了日 : 2012年7月10日
- 本棚登録日 : 2012年7月10日
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