狐笛のかなた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年11月28日発売)
4.12
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5

呪者に呪力を授けられた霊狐・野火。

人の心の声を聞く能力を持つ
12歳の少女・小夜。

屋敷に閉じ込められている少年、小春丸。


やがて敵対する国同士の
領土争いに巻き込まれていく
小夜たち。


古き良き日本の風景や
和の心を感じさせる
冒険ファンタジー。



いやはや
上橋さんの作品は初めてだったけど
美しい日本語で綴られた
哀と死の物語に、
寝る間を惜しんで読みふけるほど
かなり引き込まれました。


なんと言っても
自分を助けてくれた小夜に
密かに恋焦がれる
特別な力を持った狐、野火の心情が
なんとも切ないのですよ…(>_<)
(小夜と野火の仲をサポートし後押しする鈴姉さんのキャラがまたカッコいいのです)


そして次第に心惹かれていく
一人と一匹。

倒さねばならない敵同士。


生まれたところも生きる場所も違う
小夜と野火の恋情は
まるであの
「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせて
哀しくも美しい。


命の儚さとその価値を知り
少女は戦うことを誓い、

狐は少女の喜ぶ顔を見るためだけに
自らの主に反旗を翻していく…


もともとこの小説は
児童書として書かれたそうだけど、
子供の頃にこの作品を読めた人が
ホンマ羨ましいって思う。

けれど児童書は
決して子供たちだけのものではないんです。


絵本や児童書を大人が読んで
心が救われたり、

現状を打破する
ヒントを貰ったりって
実は結構あるし。


簡潔にまとめられた文章だからこそ
受け取る側の心のあり方によって
違う感想になるし、
想像力をかきたてられる
児童書という存在。

子供に響く話は
実は大人にも確実に響くんですよね。



果たして小夜の思いは届くのか?


「何かを得る者は
何かを失わなければならない」という
人生の真理を教えてくれる
切なく胸を打つラストは
少しほろ苦いけど、
自分は断然支持します。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年4月15日
読了日 : 2013年4月15日
本棚登録日 : 2013年4月15日

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