教団X

著者 :
  • 集英社 (2014年12月15日発売)
3.12
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本棚登録 : 5087
感想 : 541
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いや、お腹いっぱい。
未来亭のカツカレー大盛りを食べたくらいの満腹感で、お腹がはち切れそうです。
って言っても分かりませんね。
最近ハマっている中村文則さんの大長編小説。
ハードカバーの単行本で567ページの大部ですから、勤勉な会社員の私には、1日2日ではとても読めません。
中身も重厚そのもの。
タイトル通り、公安から「教団X」と呼ばれるカルト教集団を描いた物語ですが、宇宙や生命、宗教、善と悪といった、壮大で普遍的なテーマを扱っています。
こういうテーマに臆することなく真正面から向かっていく作家が日本にいることを、私は言葉の正確な意味で誇らしく思います。
物語はスリルと緊迫感があって面白く、しかも純文学の濃密さを備えています。
中村さんが近年、求めてきた方向性の、ひとつの達成と言えましょう。
それにしても、よく、ここまでいろいろと調べたものです。
特に宇宙や生命、宗教といった分野では、先端的な知見を貪欲に吸収し、惜しげもなく本書の中で披露しています。
読む人によっては少し飽きるかもしれませんが、私は括目して読みました。
描写もさすがに中村さんだけあって冴えています。
教団Xはフリーセックスを信奉していますが、めまいを覚えるほどのセックスの描写は読みどころのひとつでしょう。
それから沢渡が過去を述懐するシーン。
悪がこれほど鮮烈に描かれている小説は、ちょっとほかに思い当たりません。
難を言うと、終盤に「さすがにこれは…」と思うようなリアリティ-に欠けるシーンがあって、それが気になりました。
特に、自衛隊機を巡るあのシーンで、政府の対策本部であんなやり取りが交わされるとは、とても思えません。
思想というか観念を優先した結果なのだと想像します。
もっとも、それだけ思想・観念とリアリティーを両立させるのは困難だということも言えます。
ないものねだりは止めましょう。
世界に誇れる文学作品の誕生を言祝ぎたいと思います。
次はどの中村作品にしよう。

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感想投稿日 : 2016年9月17日
本棚登録日 : 2016年9月17日

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