ラン (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2012年2月25日発売)
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感想 : 246
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9年前、パパとママと修くんを、2年前に奈々美おばさんを亡くした22歳の環。
似た境遇を持つ自転車屋さんの紺野さんと仲良くなり、もらった自転車「モナミ1号」に導かれ、環は異世界に紛れ込む。
そこは、亡くなったはずの家族と、猫のこよみと奈々美おばさんがいる死後の世界だった。
現世と死後の世界をつなぐ通路「レーン」を超えることは生者にはできないのが普通だが、体力のあるガイド付きは例外。
環は、紺野さんの息子がガイドとして憑いたモナミ1号に乗って、レーンを超えてきたのだった。
モナミ1号に乗って何度も死後の世界に来る環だが、奈々美おばさんに自転車の持ち主を捜して、自転車を返せと強く言われ、自らの足でレーン越えをしなければならなくなる。
「日没後、日付が変わるまでに下界に戻らなければならない。40キロを一回も立ち止まらず走らなければならない」という過酷な条件を体力なし、運動音痴な環がそう簡単にできるわけもなかった・・・。

地道な朝ジョグをしていた時に出会ったのがもみあげ男「ドコロさん」。
その後、ドコロさん率いるイージーランナーズに入り、チーム皆でのんびりと走っていくが・・・。

体力なしで、自分の不幸に身を埋めていた女子が、イージーランナーズの皆と走ることで成長していく青春物語。
最初にバトルしたクリーニング屋のまちえいこがこんなにキーパーソンになるとはね。
平凡な物語だけど、劇的じゃない日常の話を魅力的に読ませるのは森絵都さんの真骨頂だね。
修君の「八方ブス」発言は泣けます。

紺野さんの手紙で、実はこよみの墓はきちんと紺野さんの手で移転されてたってのがまた憎い展開ですよ。
環がレーン越えをしたきっかけは、こよみの墓がショベルカーで台無しにされてしまった、こよみの亡骸を守れなかったという悲しみでした。
レーン越えのきっかけはこよみの勘違いだったんやねえ。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(ファンタジー系)
感想投稿日 : 2016年1月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2016年1月24日

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