本書の内容がはじめて発表されたのは1926年、マドリードのある新聞だ。80年以上前に書かれたものであるにもかかわらず、(あるいはそれ故に)これは現在の日本にぴたりと当てはまる分析ではないかと思ってしまう箇所が少なからずあったことに驚きの念を禁じえないとともに、ヨーロッパではじまっていたことが遅れて日本で起こっているのかもしれないとも思った。
(以下引用)
要するにわれわれの時代の高さとはいかなるものだろうか?
現代は、あらゆる時代の絶頂ではないが、しかし、自分があらゆる過去の時代よりも上にあり、知られている限りの頂よりもなお高いところにあると感じている。われわれの時代が自分自身について抱いている感じをまとめるのは容易ではない。つまり、われわれの時代は他のあらゆる時代よりもまさっていると信じながらも、それと同時に自分が新しい時代の始まりだと感じていて、しかもそれが末期の苦悩でないことに自信が持てずにいるのだ。以上をどういうふうに表現したらいいものか?たぶんこんなものになるだろう。すなわち他のあらゆる時代にまさりながら、自分自身には劣っている時代、非常に強いが、それを同時に自分の運命には確信がもていない時代。自分の力を自慢しているが、それと同時にその力におびえている時代。それがわれわれの時代である(p79)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学・思想
- 感想投稿日 : 2012年1月16日
- 読了日 : 2012年1月16日
- 本棚登録日 : 2012年1月16日
みんなの感想をみる