神話の心理学

著者 :
  • 大和書房 (2006年6月15日発売)
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感想 : 21
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 少なからず安っぽい言説になるけれど、神話の力を現代に取り戻す必要があると切に思う。近代科学の樹の果実から私たちは豊かさを享受したが、同時に多くを失った。計測可能なのもの、合理性がもてはやされ、計測不能なもの、非合理的なものは社会の隅に追いやられることになった。現代的な心の病の源泉が前者にあることは容易に想像できる。現実の失われた均衡をとりもどす対称性の原理に根ざした神話を学び知ることは、太古の知恵のバトンを受け取るということだ。そこから多くを得ることができるだろう。心理学にはギリシャ神話から採られたテクニカルタームがよくみられるが、神話が元々人間の無意識下の情動から生まれたものであるからだ。数千年前の物語であるにもかかわらず、そこからある種の普遍性を見出すことができるのは人間存在の根源的な問題は変化していないことを意味する。神話を胡散臭いもの、時代錯誤なものと切り捨てないで、古きを温め新しきを知るの精神で向き合ってみると意外な発見が必ずあるはずだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文・社会科学
感想投稿日 : 2011年11月8日
読了日 : 2011年11月8日
本棚登録日 : 2011年11月8日

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