ショートカット

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著者 : 柴崎友香
t80935さん novel   読み終わった 

遠距離恋愛の4つの短編。それぞれの話は独立しているけれど、遠くにいる誰かのことを考えているという、共通の細い糸で繋がっている。

■会話文が魅力的
大阪弁のたんたんとした会話が魅力的。
「だって、あっという間やし。すごない?四百キロメートルも離れてるのに」
「なんか。なんでもええから、女の子っぽいかわいい話」
「考えても仕方ないことを考えるのはやめやで。これ、今年の目標な。決めたで」
東京で語られる大阪はむやみに過剰で大げさだから、こういう何でもない大阪弁が素敵に感じられる。

■なかちゃんの存在
4編中3編になかちゃんという少し変わった男の子が狂言回しとして登場する。
なかちゃんの思いの強さは羨ましい。なかちゃんの好きな人は、結局、どんな人なのか明かされない。なかちゃんの恋の行方も、分からない。
でも、なかちゃんの思いの強さが、他の登場人物を行動的に、積極的にさせている。大きな影響ではないけれど、小さな前向きの影響。

■距離と手段
今は、遠距離恋愛といっても、鉄道などの高速交通手段とケータイやネットなどの通信手段の発達で、時間距離は短くなった。
大阪と東京も、飛行機で1時間しかかからない(作中では新幹線で3時間になっていたけれど)。しようと思えば、今、大阪にいる私が、2時間後ぐらいに、東京の表参道を歩いていることも可能だ。
ケータイやネットでなら、瞬時に、相手がどこにいようとも繋がることができる。

この短編集の登場人物もひょいひょいと距離を飛び越えて行こうとする。
行こうとさえ思えば、どこにでも行けるはず。だからこそ、どこにも繋がらない気持ちは、どこにも行きつかない、誰とも繋がらない。
ここであなたが誰とも繋がることができないのは、物理的な距離のせいじゃなくて、気持ちが離れているからなんだと突きつけられている気がする。

その一方で、遠距離をひょいひょい飛び越えていく感じがするにも関わらず、描かれている交通手段が、自転車(しかも押しながら)、フェリー、バスと比較的低速度であるのも興味深い。
「遠くは近く、近くは遠く」ということなのかな。

レビュー投稿日
2011年2月9日
読了日
2011年2月8日
本棚登録日
2011年2月8日
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