村一番の櫛職人の父を尊敬し、その腕に憧れを抱く少女。
しかし、櫛をつくるのは男の仕事。
それでも櫛への気持ちを捨てることはできなかった。
こう書くと自分の望む道を自分で進む朝ドラ的ヒロインのお話かと思ってしまうのだが、読んでみるとちょっと違う。
最初から弟の死という重い出来事を抱え、コミュニケーション不足からくる家族間の感情のもつれなど、
なかなか作品通して鬱鬱とした雰囲気。
結局は何を言われても、迷っても、どうしても櫛の道から
離れることはできずひたすらにその腕を磨いていった登瀬だったが、その櫛の道でさえ、天賦の才をもっている男の出現で、その心はひりひりと焦燥にもえる。
この男、見た目はいいもんで、もしや登瀬の相手役になるのか、と思ったが、まあ、結局は夫婦になるわけだが、
それは惚れたはれたの結果ではなく、恋愛メインは源次。
この子、最初はなんか卑しい子ども、とゆーイメージだったので、その後の展開は少々意外でもあったのだが、
なかなかの純愛ものだった。
それでもあの綿入れを登瀬はいつか身につけるのではなく、
大事に仕舞い込むのだろうと思う。
嫁として母として当たり前に生きたかっただけだったろうな母は知らず娘の心を傷つけ、喜和の心は家族から離れていった。それでも、冷遇されている婚家での姉妹のひと晩はどこか心あたたまるものがあった。
直助の創作物が登瀬を救う。
けれど、そんな彼が生きていたら、この家族はもっと幸せに生きられただろう、としみじみ思う。
自らの技術をかりものだから、次へ伝えなければと言う吾助はいかにも職人気質。こーゆー考え方は好き。
日本の職人、とゆーことでなく、なんにしろ、
なにかを極めた人とかは、結局は無私の境地に達するのではないだろうか。
- 感想投稿日 : 2015年10月1日
- 読了日 : 2015年10月1日
- 本棚登録日 : 2015年10月1日
みんなの感想をみる