国語の教科書で読んだだけのこの作品は、今読んでも本当に、見事としか言いようがない。
時代背景知りませんので、先入観抜きで作品自体のレビューします。
3章から成り、「先生と私」「両親と私」そして最も知名度の高い「先生と遺書」と構成されていますが、
まず言いたいのは、「先生と私」の素晴らしさ。
結末を知った今読み返すと、如何に著者が先生の苦しみを表すのに適切な言葉を選んだかがわかります。
「私は今より一層淋しい未来の私を我慢する代わりに、淋しい今の私を我慢したいのです。」
「平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです。」
結末に対して100納得するのはやはり気が進まず、平成の日本人として何かしら反論を、と読後考えたりもしましたが、
振り返ってみれば、1章から続く先生の渇いた佇まいは異論を挟み込む余地など無いように思います。
その牙城を更に完璧に築く後押しをするのは、あまりにも美しい日本語で書かれた3章の手紙。
有名だからという理由でこちらも身構えてましたが、そんなアンチの意など何の意味も無い程、終盤の文章は圧巻です。
しつこく繰り返される先生の葛藤は、あまり好感は持たれないものの、共感という点で誰もが頷かざるを得ない。
というか時代を越えた今私なんかを唸らせている時点で、もうそれは真理でしょう笑。
いわゆる文豪の小説に手を出したくなるきっかけとして、本作はとても良いと思います、
少なくとも私は今、文豪モード
- 感想投稿日 : 2013年1月29日
- 読了日 : 2013年1月29日
- 本棚登録日 : 2013年1月29日
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