現実の3件の死刑求刑裁判の公判を紹介しながら、現在の司法・裁判の現状を明らかにした本。3件の裁判のうち、1件目は無実の者が死刑囚になってしまったことへの裁判所批判、2件目は死刑判決が重すぎることへの批判、そして3件目は「疑わしきは罰せず」という司法の原則に則って無罪判決をだした後、当該被告が複数の猟奇殺人を犯してしまった事件に対することへの批判である。
著者は元裁判官であるため、それぞれの事件に対する有罪・無罪判断を明確には明らかにしていないが、それぞれの事件を通して、「裁判官が確信をもって事実を認定できない」、つまり「起こったことを目の前でみていない」中で有罪・無罪の判断を「思い切って」せざるを得ない裁判の現状に、課題とそして限界を感じていることがわかる。
数年前から裁判員制度が始まった。当初私はわざわざ市民が他人の裁判に関わることの無意味さを感じていたが、本書を読むと、結局裁判官人であり、また職業としてやっている考えれば、個人的な印象、感情が絡むこともあろうし、自分の裁判官人生を気にすることもあろうし、めんどくさいと思うこともあろうし、そういうことを考えると、裁判員制度も意味があるのかなと思うようになった。
マスコミ、警察、裁判所、政治家、官僚、教師・・・昔は聖職で任せておけばみんな安心だった(と錯覚していた)時代は遠い昔のことだと改めて感じた。
★★なのは、それぞれの事件については詳細が述べられており、読み物としてはそこそこ面白いが、何かビジネスや人生において得るものはなかったので。
読書状況:読み終わった
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フィクション
- 感想投稿日 : 2012年9月2日
- 読了日 : 2012年8月31日
- 本棚登録日 : 2012年9月2日
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