『その可能性はすでに考えた』の続編である。前作は、多重解決もののようで、多重解決ものではなかった。今回は、正真正銘の多重解決ものである。前作が意欲作だった点は買っていたので、読んでみた。
ある婚礼の席で、新郎・新婦を含む8人が、同じ盃を回し飲みしたところ、8人中の3人および乱入した犬1匹が死亡した。死因は砒素中毒。なぜ3人と1匹だけが死亡したのか? 砒素を隠し持っていた新婦に、疑いがかかるが…。
事件そのものの構図は至ってシンプル。焦点は、誰が、どのように、3人と1匹だけを殺害したのか。現場にかけつけたのは…あの胡散臭い青髪の探偵ではなく、その弟子という小学生。彼が、前作のように一つ一つ可能性を潰していく。
堂々巡りの議論は、それなりに読み応えがあるが、第一部ラストで…は? ポカンとしたまま第二部に進むと、なぜか舞台は海上に停泊した客船へ。舞台が移る経緯については書かかないでおく。裏社会の大物の逆鱗に触れた理由とは?
多重解決合戦の続きも読みどころだが、前作にも登場したある人物が、窮地をいかに切り抜けるか焦っているのが興味深い。そりゃそうだろう、ばれたら洒落にならないのだから。と、そこに、いよいよ主役の青髪の探偵が降臨!
前作を読んでいないと、人物関係がわかりにくい面もあるが、事件そのものはシンプルだけに、いずれの説も、前作より論理展開に無理が少ない。その反面、何でもありな前作より、小粒な感もあるかもしれない。
唐突な告白による幕切れの後、脱力するオチが用意されていた。今までの議論は何だったんだよ、おい…。しかし、不思議と腹は立たないのだった。青髪の探偵は、懲りずに「奇蹟」を追い求めるのかねえ。
たったこれだけの設定を、ここまで膨らませて長編に仕立てる手腕は、ある意味すごい。まだ続編が出るなら、つき合ってもいいかな。
- 感想投稿日 : 2016年7月11日
- 読了日 : 2016年7月11日
- 本棚登録日 : 2016年7月11日
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