シリウスの道

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 555
感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163240206

作品紹介・あらすじ

東京の大手広告代理店の営業部副部長・辰村祐介は子供のころ大阪で育ち、明子、勝哉という二人の幼馴染がいた。この三人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。それは…。月日は流れ、三人は連絡をとりあうこともなく、別々の人生を歩んできた。しかし、今になって明子のもとに何者からか、あの秘密をもとにした脅迫状が届く!いったい誰の仕業なのか?離ればなれになった3人が25年前の「秘密」に操られ、吸い寄せられるように、運命の渦に巻き込まれる-。著者が知悉する広告業界の内幕を描きつつ展開する待望の最新長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 力強い小説だ。一昔前の広告代理店を舞台にした企業小説であるとともに幼なじみ3人の邂逅の物語でもある。まず人物描写が抜群に好み。破滅的な生活を送りながらも優秀なサラリーマンである辰村がとにかくカッコイイし、周りを固める脇役もいちいちカッコイイ。特に後輩の戸塚が抜群。最初に登場した際には役にも立たない雰囲気を醸し出しているのだが、ページをめくるごとに魅力を増していく。この構造が見事。次から次へと問題が発生しちょっとバランスが大丈夫か?と思う場面もあるがラストまで一気に読ませ強引に畳み込む剛腕にも脱帽。面白い。

  • テロパラ、てのひら、に共通する空気感や人物像は安心感があるな。なんといっても、広告業界の壮絶?なビジネスシーンがあまりにもリアルで、ノンフィクションを読んでいるみたい。だけど、切ない恋や男気といった藤原さん特有の展開は、描写を敢えて控えることで、その空気が余計に浮き上がる。とにもかくにも楽しめる本でした。
    読みながら、このバー、記憶にあるなあと思ったら。。ファンなら分かるはずw

  • テロリストのパラソルを読んだことがある人なら、懐かしさも込み上げ評価が甘くなるのはやむを得ないだろう。ただし、そのことを差っ引いても名作であることに変わりはない。30歳を超えてサラリーマンをやりながら、自分にウソをつかずバカ正直に生きているつもりの自分が、主人公の辰村に共感しないわけがない。サラリーマン社会でハードボイルドに生きるとはこういうことなのだろう。作者が亡くなってしまったことが本当に惜しまれると再認識した。

  • なんて面白いんだ!登場人物全てが愛おしい。ハッピーエンドではない…と思うけれど、嬉しいのか悲しいのか涙が出てくるラスト。ストーリー途中のどんでん返しの数々も予想しない展開で驚いた。この本は家に置いて時々読み返したい本の一つになった。

  • 最後、呆気なく終わっちゃって、「えー!これで終わり!?」という終わり方でした。あっという間に読めてしまうくらい、惹き込まれる文章だっと思います。

    おそらく大分脚色はされているとは思いますが、それでもインターネットweb広告がまだそこまで普及していない、テレビCMが主流だった時代の、広告代理店の様子が垣間見えた気がします。

  • 父遺品本

  • 色んな意味で出木杉くんな気もする主人公だけれども、更に言われてみれば部長も、戸塚も、その他諸々の主人公の周りの人々は基本的に良い奴なうえに仕事もできるわけで、美人にももてて、もう何の不満もないかと思いきや気に入らないやつを見るとおんどりゃー、と向かっていく早漏気味なオヤジな設定なのかもしれない。
    ともあれ割と良い感じにいろいろできそうなのに、これがまた、うまくいかないことも多くて、結果だけ見れば失敗なわけですよ。
    でも結果だけじゃなくて、経過を見た時に、ベストメンバーでがっつり苦労して、それでも必ずしもうまくいかない、その虚しさというか、切なさというか、分かる、分かるぞ、ってなる。
    まぁ言うてもこの人広告代理店勤務のエリートだけども。
    それに比べてかっちゃんの人生どん底っぷりが泣ける。

  • 大手広告代理店を舞台にした、ヒューマンドラマ。先日WOWOWでドラマ化されたものを見て良かったので、原作を追読した。原作も非常に引き込まれる。広告業界は仕事上まったく接点はないが、その一端を知れた感じ(現実は違うのかもしれないけど)。エンターテイメントとしては十分。

  • 大手広告代理店の営業部副部長を主人公辰村は幼馴染との間にある秘密を持っていた。音信もないままそれぞれの人生を歩んだ幼馴染の1人に脅迫状が届いたのをきっかけに過去の出来事と現在が結びついて行く。アウトロー気味のビジネスマンを主人公に過去と現在、ビジネスとプライベートに点在する要素がラストに向けて統合されて行く構成は筆者の常道と言ってよいが、今回も一定の水準を保っている。事件としての辻褄はあったものの、キレ者の女性上司と主人公の恋愛など個別のエピソードの顛末も気になるところである。

  • 主人公の過去と、現在の仕事が交錯する物語。
    広告プレゼンの部分は、おそらく作者が電通に勤務していたからこその生々しさだろう。
    広告プレゼン内容は書かれた時期から十数年が経ちいささか古びてはいるものの、読ませる内容に変わりがないのは人物がよく描けているからだろう。
    彼等はこの後どうやって生きたのだろう。作者が亡くなった以上描かれる可能性がない、それだけが残念でならない。

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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