コーデ

著者 :
  • 幻冬舎ルネッサンス (2013年3月6日発売)
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本棚登録 : 18
感想 : 7
5

その昔、カットバックを多用した翻訳小説が世に流通し始めた頃、かの村上春樹氏が同形態の小説を書き始めた頃、読者はなかなかついていけず、「読みづらい」「前後のつながりが分からなくなってしまった」と酷評を受けたそうだ。
長らく日本文学は、ひとつないしは一人の視点で描かれるものと定義されてきた。しかしエンタテインメントの先進、欧米でその根幹を任され続ける小説は、常に新しい血を必要とし、先進的な技法は今年も発表されている。
話をこの小説に戻そう。この作品で使われるものは、通常のカットバックどころではない。常に4〜5場面が同時に進行する。トリックの一つとして、時間軸が操作されている箇所まである。ストレートに言って読み易い小説ではないだろう。だが、それでこその叙述系推理小説。恐らく数年後はこれがスタンダードになっている気さえしてくる。
全てを理解出来た読者にだけ伝えられる、恐るべきメッセージといい、何ともうすら寒い作品の登場である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年7月21日
読了日 : 2013年7月6日
本棚登録日 : 2013年7月6日

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