カデナ (新潮文庫 い 41-11)

著者 :
  • 新潮社 (2012年7月28日発売)
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感想 : 26
4

限りなく☆5に近い☆4。池澤夏樹のある方面における最高傑作だと思う。

沖縄人から語られた話というのは読んだことがない。でも、沖縄人の感覚は沖縄人にしか分からないし、本土の人間はそれを知る術がない。伝え聞くことはできるが、感じることはできない。なぜなら、自分たちは沖縄人じゃないから。そういう意味ではすごく濃密に沖縄の目線で書かれた話だった。

昨年、沖縄に行った。きっかけはcoyoteの沖縄号と探検バクモンとCocco。

coyoteは、沖縄とアメリカの関係を深く切り取った上、沖縄人のアイデンティティにも切り込んでいた。

探検バクモンでは、嘉手納基地の中にあるアメリカタウンを取材していた。小波津という沖縄の芸人がこんなことを言っていた。「沖縄人は基地をなくしたいと思ってる。でも、沖縄は米軍による収入が多くを占めていて、アメリカは生活の中にある。基地をなくしたいと思いながらも、若者は基地の中で働くことをステータスのように感じることもある。アメリカはすぐ傍にあって、沖縄人はいつも矛盾の中に生きている」

あとはCocco。慰霊の日に出演したNews23での筑紫哲也との会談や、めざましテレビのインタビュー。「沖縄人はいつも自分たちの願いは叶わないものだと思ってきた。ずーっとなんくるないさと言い続けてきた。でも、基地移設の話が挙がったとき、いままでなんくるないさーと言い続けていた沖縄人が、初めて自分たちの願いが叶うかもしれないってことを信じた。でも、最後にはやっぱりダメだった。」

ずっと負け続けてきた沖縄。自己矛盾の沖縄。アメリカの沖縄。そんな沖縄に触れたくて、去年生まれて初めて沖縄に行った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年7月4日
読了日 : 2013年7月4日
本棚登録日 : 2013年7月4日

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