チームの力: 構造構成主義による”新”組織論 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2015年5月8日発売)
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本棚登録 : 512
感想 : 45
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2017.9.13
構造構成主義を考えた著者のチーム論。新書故の限界だが、言われていることは正しい。しかし実用に関しては理論として大味すぎる。方法は目的と状況に相関する、これは個々の方法論を相対化した上で個別具体的な状況における最適な方法を導くためには重要な指摘である。が、目的と状況の認識も個々人でズレるだろう。このレベルでは、1言われて10わかる人には使えても、なかなかこの理論を実現化するためには具体的にどういう場面でどうすればいいのかがイメージしにくい。
価値の原理にしても、欲望に相関するが、より言えばそれは個人的欲望ではなく普遍的欲望(ただしこの普遍はその当人の頭の中だけの普遍である)に相関する。そして普遍的欲望の成立根拠は承認欲求である。よって自らの普遍的欲望=みんなこれを望むだろう、の実現の困難は、1、私はみんなのことを考えてしているのにそれができないという「正義の挫折」の感覚か、2、みんなが望むことをすることで私の価値が担保されているのにそれが否定されるという「非承認の感覚」を呼び起こす。自分の思う価値は自分の欲望に相関する、という自己認識だけでは自分の価値観を相対化することはできない。それだけではこの、引き剥がされるような感覚に襲われる。必要なのはそれにプラスして、その欲望が普遍的欲望であり、それは承認を根拠にしているが、その普遍性は当人の意識においてのみの普遍性であり(個人の限られた人生で完璧な普遍性に到達できるわけがない)、より普遍的なあり方は自らの普遍性を相対化しながら他者に開かれることでより新しい普遍性を構築していく姿勢にある、ということを理解することである。強い確信ほど間主観性をもつ。ただ欲望に相関するとだけ言えば、「それはあなたの欲望でしょ?」としか言えないし、当人もそれが欲望だけではなく間主観性に根ざしたものに気づかないから、「でも私はこう思う!!」とムキになるだけである。一切の価値は欲望に相関する。さらに強い価値観ほど間主観的欲望に基づく。過去の親との関係で人格が強く固着してしまうのもそういうことなのだろうなー。異なる意見を持つ他者を理解する、特に仕事などの公共性を持つ活動において相互理解に伴ったアイデアを出し合う場合、こういう間主観性の破壊と再構築にも目を向けなければならない、と私は思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年9月21日
読了日 : 2017年9月13日
本棚登録日 : 2017年9月13日

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