婦系図 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2000年6月29日発売)
3.64
  • (23)
  • (23)
  • (52)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 375
感想 : 43
5

俺をとるか女をとるかで有名な鏡花の代表作のひとつですね。
しかし、そのメロドラマ部分はすごく有名なのに、この婦系図のメインストーリーっていうものはあんまり知られてない気がする。かく言う私も、鏡花館の展示を見て、そのストーリーのぶっとびさwを初めて知って思わずフイタくらいですw
どれだけぶっとんでいるかは、是非読んで知ってください。

結婚したい女性の素性やらなんやらをいちいち調べ上げてから結婚するだと? ふざけんな! と友人河野英吉(河野家)にかみつく早瀬の姿からは、「愛と婚姻」という檄文を発表した鏡花そのものが感じられました。特に最後のシーンの口上はめっちゃ胸が打たれて、目頭も熱くなりました。
目頭が…といえば、私はこの作品を読むまでずっと、紅葉にあたる酒井先生はお蔦を許してくれないのかなと思っていたら、最後の、お蔦臨終のシーンで許してくれるんですよね。「俺が悪かった」って。……紅葉は最後の最後までお鈴さんと鏡花の仲を許してくれなかったけれど、この作品の酒井先生は許している。作品の最後は阿鼻叫喚だけど、私はこの点に惹かれたなあ。
鏡花は創作を、小説を書くことで何をやりたかったのだろう? 幻想小説を書く一方で激しいものも書いて、現実とは反対のことを描き、奇跡を描いたりする。
この作品を読んだおかげで大体卒論の方向性が定まった気がするのでした。作品論じゃなくて作家論になっちゃいますねホント…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2009年5月30日
読了日 : 2009年5月30日
本棚登録日 : 2009年5月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする