灰燼のカルシェール -What a beautiful sanctuary-

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そこは、全てが終わってしまった、もう一つの到達点。世界中に突き刺さった時計塔が何もかもをあまりにも突然に終わらせた。生ける命のない街には機械死人(サイバーゾンビ)が残った命を喰らい続ける。やがてはその死人達も朽ちていく灰色の世界の中を、けれども旅する“二人”がいた――その体のほとんどが鉄と化した青年・キリエ。彼を保護し共に歩く少女・ジュヌヴィエーヴ。最後に残った二人。だけど命は、ひとつだけ。二人は探す。二人は向かう。お互いが「命を使わずに」いられる、最後の場所、サンクチュアリへ――ライアーソフトとニトロプラスが夢のコラボレーション。人気シリーズ・スチームパンクシリーズもう一つの最新作。

スチパンのデッドエンドを重ねた先の物語、という意味でスチパン最新作。なるほどなと思いました。巻末の年表なんか見てみるとゾス計画が成功してたり太陽宣言がなかったり明らかに逆の方向に向かってしまったんだなとわかるようになってます。ギーが手を伸ばさなかったら、メアリが走ることをやめてしまったら、エリシアが旅をやめてしまったら……そんなバッドエンドの果てにある、希望の狩り尽くされた世界に、本当の意味で最後の希望として生きる二人の物語でした。付属のサントラの曲番号が下の方に指定してあって、それをBGMに読み進めるとそのまんまゲームのスチパンになるので、面白い試みだなー!と感動。おかげでバトルシーンは大変臨場感を感じました。こういう手法もっとあればいいのに~
キリエとジュネは最後に残った二人であるから、恋人同士なんて暢気なくくりでくくれなくて(出逢いからして)どっちかっていうと姉弟、家族みたいな感じで読んでいました。ジュネの正体にはほんっとにびっくりしました。いい意味で裏切られた! だから「命はひとつだけ」なんだなあ。全然予想もしませんでした。よく見てみれば&考えてみればわかるのになあ。でも、ジュネのキリエを守りたいという気持ちは命令やプログラムでないと思う。ジュネは普通の人間以上に人間だったと思います。メアリがモランのことを彼女は人間よと言いましたが、私もそう言うと思う。ジュネは人間よって。
この、ジュネとキリエ、お互いを守りたいって気持ちがとにかく尊い。護りたいって気持ちはお互いを想う気持ちですよね。相手へ向かう気持ち。それが恋であれ友情であれ憧れであれ尊敬であれ、そういう気持ちが世界の絶望の果ての果てでも“ひと”を生かすもの、明日を繋ぐ何かになる。そう感じました。
ぶわっと、急に目頭が熱くなったところは最後の方の描写で、みんな生きようと、立ち向かおうとした、という旨の文章なのですが、というのも読んでいた時期が時期だけに一昨年の震災を思い出してしまって。カルシェールの終わりだって、3月11日のように突然訪れたもの。その裏にはチクタクマンがいて、あがく人間達を嗤ってて……でもジュネとキリエは諦めないでいて欲しい。それはとりもなおさず、私達もまた諦めないでいて欲しい。そう思う。そうするしか術はない。
改めて、生きること、互いを守りたいと思うこと、その尊さを学んだような気がします。この作品の続きじゃなくてもスチパンを書籍の形で発表してくれたらいいなあと思います。ゲームで出てるののノベライズですとか!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2013年3月21日
読了日 : 2013年3月18日
本棚登録日 : 2013年3月5日

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