(2006/12/15)
ウィトゲンシュタインの「論考」はずっと気にはなっていたのですが,読んだことが無かった.
この本は,野矢先生の視点から,「論考」が何をいっていたのかを,自説と共にわかりやすく
解説されています.
ウィトゲンシュタインは哲学の世界などでは「天才」と評されるコトが多いようですが,
この本で私が感じた限りでは,そこまでとっぴな話は感じない.
フレーゲやラッセルという巨人の存在下で,ラッセルのパラドックスという問題に直面し,
それを完全に記号論理の世界で閉じた議論で解決しようとせず,逆に直感的な対象を表象する自然言語の
制約条件をケアすることで,その問題を解消しようとした.
というのが大筋に見えますが.
僕らの立つパースの記号論,つまり「記号とは何か?」という問いかけに対して,最低条件として<サイン・対象・解釈項>の三項関係を求める立場から言えば,上記制約条件のケアの仕方が不十分過ぎるように思える.
やはり論理・言語の世界をかなり自律的な存在として,厳密な議論はそこに閉じておいて,実世界との対応は直感任せに投げてしまう態度という点では,ラッセルやフレーゲを初めとするその時代の潮流からはさして逸脱していないように思える.
こういう,西洋思想の流れから見ると,やはり,その後あらわれる構造主義の面々,特にピアジェ,まー,あとラカン(あんまり詳しくないけど)あたりの素晴らしさが際だつと言うことでしょうか?
ピアジェは単純に「発達心理学の人」と思われてることが多いですが,本人は「発生的認識論」であると主張しています.一線画している訳です.
- 感想投稿日 : 2014年12月31日
- 読了日 : 2006年12月15日
- 本棚登録日 : 2014年12月31日
みんなの感想をみる