一人の青年ルポライターが戦後のナチスドイツの親衛隊の救済組織に鋭く迫っていく。モサドやユダヤ人側の訴追組織の思惑が複雑に絡む中、中核へと一歩一歩近づく程に高まるスリルは本書の醍醐味である。
後年のフォーサイスの作品と比較するとプロットの緻密さにおいてはやや欠けるが補って余りあるテーマの深みがある。
1972年当時、本書に記載・言及されている内容は、後日、事実として報道されたことが多い。この小説が当時の事実を超える真実を多く語っていると当時の読者が感じたことは想像に難くなく、このジャンルでの卓越した作者の才には感服する。
主題となるナチスドイツの親衛隊は、血の団結力を誇り、優秀な人材を取り揃えただけに、ユダヤ人収容所など第二次世界大戦後の大きな傷となった。
もしかするとドイツ人の戦後感が、わが国の戦後感と違うとするなら、敗戦と同時に逃げたナチス親衛隊のもたらした影の影響があるのかも知れない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
冒険小説
- 感想投稿日 : 2013年8月15日
- 読了日 : 2009年4月15日
- 本棚登録日 : 2013年8月15日
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