外交敗戦―130億ドルは砂に消えた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年6月30日発売)
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本書の提起する国体としての日本のあり方は、一つにセクショナリズムにより対外に対して弱体化している交渉力を取り戻すべく政治力を行使せよということだと思う。パクスアメリカーナは、既に昔のことになりつつあるが、先進国として世界に負っている義務、ノーブレスオブリジェは内容如何に関わらず存在する。湾岸戦争以前は、開発国に対して悪い言い方をすればカネをばら撒くことで、このノーブレスオブリジェはある面達成できていたが、この湾岸戦争は、明らかに軍備及び兵員の供与をノーブレスオブリジェの基準としてみるアメリカロビーを中心とした国際世論の形成があり、平和憲法により厳しく軍事行為を規制された我が国は、130億ドルの経済支出をしたにも関わらずこの貢献が見向きもされないという厳しい現実に直面した。今日、有事の際の国際貢献にある意味、法整備を飛び越え、汗や血による活動も行う背景にはこの屈辱感がある。

筆者は、この過程を本書の中に再現して鋭くこの問題に迫る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年8月10日
読了日 : 2013年6月10日
本棚登録日 : 2013年8月10日

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