手嶋氏のヒット作となつた「ウルトラダラー」続作となる本書では、金融市場を舞台に蠢く国際社会を英国諜報部員ブラッドレーと盟友マイケルが紐解く体裁で抉っていく。その端緒となるのがナチスドイツのポーランド侵攻とそれにより散り散りになった在ポーランドのユダヤ人社会である。シンドラーのリストで有名なオスカーシンドラー氏とともに在ボーランドユダヤ人の救世主となったリトアニア領事代理杉原千畝氏。彼の発行したビザのもと多くのユダヤ人が国外へ脱出したが、その時のユダヤ人家族のひとりで後にシカゴマーカンタイル市場で大立者となったアンドレイと彼が脱出譚の際に立ち寄った日本で友情を育んだ相場師マツライこと松山雷児そして後のユダヤ人アンダーネットワークの中核となるソフィアが織りなす複雑な紋様を静かに描きあげる。インテリジェンスを扱うと複雑な心理戦か、激しい逃走劇がテーマとなりそうなものだが、ただひたすらに静かな謎解きが進行する。なかなかのプロットに感心することしきらの作品である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年10月29日
- 読了日 : 2014年10月29日
- 本棚登録日 : 2014年10月29日
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