ダークピットシリーズをビッグヒットに押し上げたシリーズ初期の代表作。
カッスラー作品には、幾つかの平行する物語がそれぞれのプロットで描かれ、最終的には一つの物語に織り成される。そして、そこには勧善懲悪が通奏低音のように語られる。
「正義は悪を必ず凌駕し、震撼ならしむる」
今回は、当時の冷戦構造を根底から覆すアメリカ本土の新たな防衛システムとあのタイタニックが一握りの鉱石(ビザニウム)により結びつき、合衆国の威信を架け3650mの海底に横たわる4万5千トンの沈船を浮上させるという奇想天外なプロジェクトがモチーフとなっており、読者に息つく間を与えない。
若干、興ざめの補足としては、ビザニウムという金属は存在しない。また、沈没したタイタニック号は数回にわたり調査され、第三煙突の下あたりで千切れており、海中に没する前に竜骨が折れた(映画タイタニックのとおり)とする説を裏付けた。したがって、本作はカッスラーの全くの創造の産物であるが、実際の調査が本書発刊の5年後であることを踏まえるとカッスラーの筆術はまことに魅力的でもあり、読者の空想を十分に育んだものと思われる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
冒険小説
- 感想投稿日 : 2013年8月11日
- 読了日 : 2009年8月11日
- 本棚登録日 : 2013年8月11日
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