多忙を極めたコピーライターである著者が、過労死寸前、憑かれたように思い立った自分探しの旅。それは、忙しない日本の社会で知らず幾重にも身に纏ってきた無数の枷を一つずつ取り払っていく“濯ぎの道行き”だ。インディアン・ネームをもらう──ただそれだけの目的を胸に、大勢の人々と行きずり、言葉を交わし、導かれるように辿り着いたナバホ居留区で、著者はしかし当然の拒絶を受ける。引き下がるつもりのない著者の抗弁が振るっている、「200人の人間が自分をここへ導いた。神に導かれたも同じだ」。ネイティブ・アメリカンの箴言と著者の内省が交互に紡がれ、自然光を思わせる鮮やかな色で描かれた愛らしいイラストがそれを彩りながら、著者が旅の果てに掴んだ“解放”へと読者を誘う。同じ旅に出てみたくもなるけれど、きっと今度こそ受け入れてはもらえないだろう──ナバホの人々は、こんな変人の来訪は著者を最初で最後にしてもらいたいと切に願っている。
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- 感想投稿日 : 2010年6月3日
- 読了日 : 2010年6月3日
- 本棚登録日 : 2010年6月3日
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