1786年9月3日、カールスバートをお忍びで出発してから、ローマからナポリに向けて出立するまでのイタリア旅行記。幼少期以来培われてきたイタリア、あるいはローマに対する憧憬によって突き動かされているかのようにゲーテはイタリアに対する思いを綴っている。もっとも、フィレンツェには「3時間」しか滞在せず、アッシジについても記述が少なめであったりと、ゲーテが憧れるイタリアは今日の人間が思い浮かべるものといささかずれているようにも思われる。滞在地の中で最も記述が割かれているのはヴェネツィアとローマであるが、ルネサンス期の絵画や寺院、古典古代の建築物や石像についての記述の他にも、道すがら見える山地の鉱物について詳しく記述したり、ローマで『イフィゲーニエ』や『タッソー』の推敲にまい進するなど、ゲーテならではの記述も多い。また、ローマ滞在中の記述では、ヴィンケルマンに思いを馳せるなど、18世紀ドイツの文化人ならではの記述も姿を見せている。この本では、イタリアの文物や風俗に対するゲーテの見解が分かると同時に、当時のドイツの知的状況についても一定の知識を得られるだろう。
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カテゴリ:
文芸
- 感想投稿日 : 2015年7月6日
- 読了日 : 2015年7月6日
- 本棚登録日 : 2015年7月6日
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