本書を貫く大テーマは、「ヨーロッパとは何か」という問題である。著者は、古典古代の国家や文化にヨーロッパの固有性を求めるのではなく、ゲルマン人の侵入以降の歴史がヨーロッパが成立するための重要な要素として捉えながらも、封建社会の成立をその決定的要因と見ている。そのため、この上巻では、いわばヨーロッパ成立の前史が扱われているといってよいだろう。ローマ世界の崩壊から東ローマ帝国とローマ教皇の角逐、その中で登場してくるゲルマン人、そして地中海沿岸を破竹の勢いで制覇していくイスラーム勢力の様子など、ヨーロッパ世界が成立するための諸条件を簡潔明快に叙述していく様は、さすがは中世史研究の大家と思わせる。
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- 感想投稿日 : 2015年3月21日
- 読了日 : 2015年3月21日
- 本棚登録日 : 2015年3月21日
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