ヒューム 希望の懐疑主義―ある社会科学の誕生

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  • 慶應義塾大学出版会 (2011年10月29日発売)
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ヒューム生誕300周年の年に、著者の既発表論文などを一冊にした研究書。全体は「出発」「発展」「展望」に分かれている。「出発」では、ヒュームの経済論・政治論を「ある社会科学」と捉えたうえで、その方法的意義や対象認識の特質などが明らかにされる。「発展」では主として経済学との関連でヒュームが論じられるが、むしろ従来の経済学学説史的理解でヒュームの具体的社会理解がさほど問題にされてこなかったことを指摘している。「展望」では、近年盛んな古典的共和主義パラダイムとヒュームの共和国論との関連、日本の市民社会論とヒュームとの関連などが論じられる。政治思想に軸足を置く者にとっては、この部が最も興味深い箇所かもしれない。当該部では、ヒュームの共和国論が近代的文明社会において実現されるべき共和国を論じたものであり、古代や別の時代にも妥当しうる一般モデルではないと明確に先行研究との違いを打ち出しており、このあたりをいかに理解するかでヒュームの思想史的位置づけも変化していくだろう。

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感想投稿日 : 2014年8月13日
読了日 : 2014年8月13日
本棚登録日 : 2014年8月13日

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