晴天の迷いクジラ

著者 :
  • 新潮社 (2012年2月22日発売)
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本棚登録 : 3365
感想 : 583
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ひとつ前に読んだ「ファミリーポートレイト」をひきずっちゃうなぁ。
コマコほどではないにしろ、恐ろしい母の呪い、痛々しい心の叫びが重なります。

母親からの愛情を感じられず家を出て、仕事に忙殺されて彼女にフラれて、うつ病の薬が手放せない由人。
圧倒的な絵の才能が有りながらも泥沼から抜け出せず、子供のまま子供を産み、育児ノイローゼからすべてを捨てて逃げ、そしてまたすべてを失った野乃花。
強迫めいた母親のためにいい子であろうと頑張り続けても自分を見てもらえず、やっとできた友達を失い、生ける屍のようになった正子。

ぼろぼろの3人が道連れに、湾に迷い込んで出られなくなったクジラを見に行く。
それぞれの過去話は重苦しく痛々しくて、子供を捨てた野乃花でさえ嫌いになれず、必死にもがく様子にひりひりしました。
3人もクジラも、死の淵が一歩先まで迫っていたけど、そこを踏み出さずにいることはそんなに難しいことじゃないってことに気付いたラストは、すーっと心が凪いだ。
クジラの町で出会う人々、特におばあちゃんがいい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ●か~この作家
感想投稿日 : 2013年6月24日
読了日 : 2013年6月23日
本棚登録日 : 2013年2月8日

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