「失踪した主人を探して欲しい」
この時点で、安部公房を何冊か読んできた人なら、見つかることはないことは想像に難くないだろう。したがって、見つからないのである。
いなくなった人を探して見つからないというテーマは「密会」と似ており、安部公房作品らしくどの登場人物ものらりくらりと本質を語らない。主人公もフラフラと本質に突っ込まず、心理描写を見ながら、読者がどんどん焦らされていく。プロットとしても「密会」の昼間版というところ。とはいえ、あちらほどディープでえげつない描写が有るわけでもないので、慣れていなくても割と読みやすい1冊となっている。安部公房の準初心者におすすめしたい。
安部公房作品の読み解きの難しさの一つとして、やたらと複雑な建物などが出てくることがあるが、本作は車であちらこちらに移動し、それらの位置関係がしっかりと描かれているために理解しやすい。沿う感じてドナルド・キーンによる解説を読んだら、しっかりと書かれておりました。安部公房に興味を持ったのなら、解説付きの文庫本版をおすすめします。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
純文学
- 感想投稿日 : 2014年12月1日
- 読了日 : 2014年11月30日
- 本棚登録日 : 2014年11月30日
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